【克哉】「…何ですか、それは…」
【Mr.R】「眼鏡ですよ。ご存じでしょう?」
【克哉】「それはわかりますけど…」
男の手の中にあるのは、細いフォルムの、なんの変哲もない眼鏡だ。 外灯の光を反射して、銀のフレームが冷たく光っている。一体、何の冗談だろう?
【克哉】「いえ、結構です」
だが、克哉の拒絶にも男はまったく動じた様子はない。
それどころか、にこやかに、むしろ朗らかな様子で眼鏡をそっと撫でてみせる。
【Mr.R】「そうおっしゃらずに。これは、必ずあなたのお役に立つはずです」
【克哉】「でも、本当に必要ありません。俺、視力は悪くないですから」
【Mr.R】「ああ、あなたはこれを、視力の補正のための、ありきたりな眼鏡だと思ってらっしゃるのですね?」
【克哉】「……どういう、意味ですか?」
首を傾げる克哉の前に、男は眼鏡をもった手を差し出す。
【Mr.R】「説明不足で、申し訳ございませんでした。これは、ただの眼鏡ではありません」
【Mr.R】「言うなれば…そう。あなたにとっての、ラッキーアイテムのようなものです」
【Mr.R】「冗談だと思われるのなら、試しにかけてみてはいかがですか? そのくらい、大したお手間ではないでしょう?」
【克哉】「それはそうですけど…ラッキーアイテム?」
【Mr.R】「はい。さあ、どうぞ。これを身につけた瞬間から、あなたの人生は大きく変わります」
【Mr.R】「まるで生まれ変わったように、素晴らしい、夢のような」
【Mr.R】「あなたを取り巻く世界の全てが、あなたの思うままになる……」
【Mr.R】「これを手にしないなんて、そんなもったいないことをする人間は、この世に1人としていませんよ」
【克哉】「はぁ…」
あまりに大袈裟な男のトークに、克哉はぽかんと口を開けたまま、言葉を挟む気にもなれない。
【克哉】(よくもここまで…。この男、眼鏡のセールスでもしてるのか? 俺も、これだけ流暢にしゃべれたら…)
【克哉】(駄目だな。オーバートークは、禍の元だ)
【Mr.R】「どうですか? ただ、眼鏡をかけるだけのことですよ」
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