【太一】「あっ。笑った。克哉さんのそういう顔は、初めて見るかも」
【克哉】「そういう顔?」
【太一】「だから、今みたいな笑顔。オレ、克哉さんが通勤してるとこしか見てないし」
【克哉】「君はお店の前を通る人のこと、みんな見てるの?」
照れ臭いのと同時に、少し不思議にも思う。 自分がそんなに目を引くとは思えない。
【太一】「みんなは見てないっすよ。オレだって仕事あるし。でも、克哉さんのことは、なんか気になって」
【克哉】「どうして?」
【太一】「克哉さん、パンくわえて走ってたことあるでしょ。すんごい必死な顔で」
【克哉】「えっ?」
【太一】「オレ、そんなの本当に見たの初めてで。うわ、マンガみたい!って思ったんだよね」
……聞かなければよかった。
言われて思い出したが、確かにそんなことがあった。
あの時は取引先に直行する予定だったことを忘れていて、時間ギリギリに飛び出したのだ。
長い会議になることはわかっていたし、途中で空腹のあまりお腹を鳴らさないよう、何か口に入れないといけないな、と……。
【克哉】(でも、誰も見ていないと思ったのに……)
そんなみっともないところを見られていたなんて、恥ずかしくていたたまれない。
だが、太一は人なつこい顔でニコニコと笑っている。
【太一】「そこからかな、気になったの」
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