部屋に戻ると、なんとなく外の風に当たりたくて窓を開けた。
穏やかな風が、微かに潮の匂いを運んでくる。広い空には星が瞬いている。
【赤井】「綺麗だなあ」
東京ではこれだけの星空は、それこそプラネタリウムにでも行かない限り見られない。
空気に自然、何もかもが頭に思い描いていた光景だ。
ロケをすることに多少の躊躇は覚えていたものの、思い切ってここに来てよかったと思う。
島の伝承についての新しい話は意外だったが、それもいい刺激になるかもしれない。
参加しているメンバーに問題がないわけじゃない。
でも多少の諍いはあっても、いい映画を作るという目的の上では、みんなひとつになれるはずだ。
頭の中を巡るのは、映画のことばかり。
眠ろうと思うのに、この興奮が収まらない限り、眠れそうになかった。