+甘い微熱+


「んー、まだちょっと熱があるみたいだなぁ」

俺が差し出した体温計を見て、亮一さんがふっと顔を曇らせた。

「すみません。せっかく、みんなで予定立てたのに……」

声が掠れて咳き込むと、ヒロと太陽が毛布を顎まで引っ張り上げてくれた。

「明日叶ちん、ムリしないで。風邪って、こじらせるとコワイんだから」
「そっスよ! 明日叶センパイだけの体じゃねえんスから、大事にしてください」
「なんだったらコイツにうつしていいから。どうせバカは風邪ひかないっていうし」
「うっ……た、確かにカゼひいたことねーけどさ……」

いつもよりも声を落とした太陽とヒロの横から、桐生さんと眞鳥さん、興さんが代わる代わるのぞき込んできた。

「ここのところ毎日、寒いですからねえ。明日叶、薄着だし」
「インフルエンザではないと診断されたのだから、安静にしていれば落ち着くだろう」
「あすか、くすり、苦いけど、ちゃんと飲むんだぞ?」
「気を遣わせてしまって、すみません……ごほっ」

普段通りに話そうとしても、やっぱり咳に邪魔される。

「うん……」

気遣わしげな顔の慧に、俺はなんとか頷き返した。その熱っぽい額を、大きな手がそっと覆う。ディオだ。乾いた手はいつもよりもひんやりと感じて、気持ちがいい。その感触にほっと息をついた俺に微笑んだディオが、みんなをぐるっと見回す。

「……で? どうする、今日の予定は」

晴れた日曜日の今日、チームグリフのメンバー全員で、遊びに行くはずだった。
休日に、みんなで遊びに行くというのはわりとめずらしい。
普段から一緒に行動していることもあって、休みの日は各人が自由に過ごすことがほとんどだ。
でも、少し前、この魁堂学園近くのスケートリンクがオープンしたことを知った亮一さんが、ミーティングの終わりかけに、『たまには、みんなで遊ぼうか』と言い出したのだ。
 

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