+甘い微熱+P10
「明日叶、いま、おまえの前にいる男は誰だ?」
「……ディオ、……だけど」
「そうだ。おまえの男は、俺だよな」
断言されて、頬がカッと熱くなる。
ディオの言葉に隠された意味がわかるから、慌てて毛布の中に隠れようとしたが、一歩遅かった。
「前言撤回だ。お前を甘やかすと、ろくなことがない」
「え、え……っ、うわ、ディオ!?」
ジャケットを素早く脱ぎ捨てたディオが、強引にベッドにもぐり込んできて覆い被さってきた。
「優しくされるのは遠慮するって言ったよな、明日叶。じゃあ、メチャクチャに犯してやる」
いまにもくちびるが触れそうな距離で囁かれたその艶めく声を、俺は夢でも聞くような気がする。きっとこの先、何度も、思い出してしまう。
ディオだけが発することができる、強い力と熱がこもる声を。
「今度、おまえが風邪を引いて寝込んだときに真っ先に思い出す記憶を、俺がつくってやるよ」
「ディオ! ちょ、ちょ……っと、待て、って……さっきの話は、昔を思い出した、だけで……っ」
「だったら、いま、おまえを抱き締めてる男のことをきっちり胸に刻んで、それだけを思い出すようにしろ」
無茶なことを言う大きな影が一層濃くなり、抱きすくめてくる。広い胸を押しのけようとした手首すら掴まれ、押さえ込まれて動けない。
「おまえの身体のことは、俺が一番よく知ってる。……安心しろ。無茶はしねえよ」
「――ディオ……」
「甘い甘い思い出にしてやるぜ?」
笑い混じりの熱い吐息でくちびるを優しくふさがれることに、俺は、もう、抗わなかった。
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