+甘い微熱+P3


「明日叶をひとり置いていくのは心配だなぁ……」

頭をかく亮一さんに、眞鳥さんや慧が同意する。

「今日はやめといて、また別の日にしてもいいんじゃないですかぁ? スケートじゃなくてもいいわけですし」
「明日叶が行かないなら、俺も行かない」
「そッすよね。やっぱ、センパイのカラダが心配だし……」
「あの、俺は大丈夫ですから」

慧の断言にしょんぼりと肩を落とした太陽を見て、慌てて遮った。
来週からは、次のミッションの準備が始まる。そうなったら、みんなで遊ぶというのも当面お預けになってしまう。

「俺に構わず、遊びに行ってきてください。風邪を引いたのは俺の責任です。昨日より熱が下がったから、今日一日寝てれば治ります」

俺のせいで、忙しいメンバーがせっかく合わせてくれた予定を台無しにしてしまうのは嫌だ。心配してくれるのはほんとうに嬉しいけど……、でも。
言い切ったところで、ディオとちらっと目が合った。かすかな目くばせに、ディオが頷く。

「明日叶がああ言ってるんだし、滑りに行こうぜ」

視線の意図を正確に読み取って、ディオがそう言ってくれる。

「ここで俺たちがいつまでも騒いでたら、こいつだって眠れないだろ」

その言葉に、集まったみんなが顔を見合わせた。

「正論だな」
「じゃあ、俺たちは出かけるけど、ちょっとでも具合が悪くなったら我慢しないですぐに校医を呼ぶんだよ。俺たちも早めに帰ってくるから」
「ゆっくり寝ときなさいね~」
「明日叶ちん、おみやげ楽しみしててね!」
「はい、行ってらっしゃい」

ひらひらと手を振る眞鳥さん、眼鏡を押し上げてため息をつく桐生さんや興さん、ヒロ、みんなの背中を押して、最後に部屋を出ていこうとしたディオがくるっと踵を返して戻ってきた。

次へ


使用されている文章の著作権はすべてSprayに帰属しております。文章等の転載はご遠慮下さい。

戻る


Copyright(C)Spray All rights reserved.