+甘い微熱+P4


「あ、……ディオ?」

なんだろう。忘れ物でもしたんだろうか。
毛布の縁からあたりを見回す俺に、ディオがかがみ込んできて、くしゃりと髪を撫でてきた。

「早く治せよ。おまえが元気じゃねえと落ち着かないぜ」

俺のことを覗き込んでくる目は、さっきまでと違う。チームメイトでも、ただの同級生でもない――俺だけに向けてくれるディオの眼差しだ。とても大切なものを見つめるような深い視線に、胸の奥がきゅうっと引きつれるように甘く痛む。

「……わかってる」

ディオの気障なセリフやスマートな振る舞いには少しずつ慣れてきたけれど、こういう不意打ちみたいに見せてくる優しさには、どうしてもこころが追いつかない。もごもごと呟いて毛布を引き上げた仕草がおかしいのか、ディオが笑う。

「おまえも、俺のそばにいられないのはさみしいだろ?」

そう言いながら、ディオが髪をかきあげて、額にキスをしてきた。汗ばんだ肌を味わうように、舌先で軽く舐められると、違う熱が出そうになる。

「やめろよ。そんなことしたら……」
「ん?」
「……熱があがる、だろ」

照れ隠しに、ゲンコツをつくってディオの頬に軽くあてた。

「可愛いこと言ってんじゃねえよ、ガッティーノ。食うぞ?」
「バカ、ふざけたこと言ってないで、早くみんなと行ってこいよ」
「ふふ、そうやって意地を張ってるうちは大丈夫だな。じゃあ、明日叶。また、あとで」
「うん、……また、あとで」

鼻先を軽く人差し指で弾かれ、互いに笑った。
髪先をもう一度優しく引っ張られて、その感触が消えないうちに、ぱたんと扉が閉じて、賑やかな声は少しずつ遠ざかっていった。


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