+甘い微熱+P6


「ディオ! どうしたんだよ、スケートに行ったはずじゃ……」
「起きるな。寝てろ」

起きかけた俺をベッドに押し戻し、ディオが椅子を引っ張ってきてどかりと腰掛けた。

「またあとで、ってさっき言っただろ」
「言ったけど、こんなに早く戻ってくるって思わなかった」

口では反発したけど、目がどうしてもディオを追いかけてしまう。
みんなと一緒に遊びに行ったほうがディオだって絶対に楽しいはずなのに、俺のことを気にして、戻ってきてくれたんだ。
申し訳ない気持ちと嬉しさが混ざり合って、どんな顔をしていいかわからない。

「寝てれば、すぐに治るのに。俺のこと、そんなに甘やかすな」
「甘えるのは病人と恋人の特権だぜ、ガッティーノ。それにな。じゃんけんで俺が負けたんだよ」
「じゃんけん……?」

なんのことだかわからなくて首を傾げた。

「あいつら、やっぱ、おまえが心配でしょうがないらしくてさ。誰かひとりはそばにいるべきだってうるせえんだよ。それで、じゃんけんで一番負けた奴が、おまえのところに戻るって話になったんだ。――で、負けたのが、俺」
「ディオが負けたのか……」
「いいだろ、べつに負けたって。それより、俺に看病されるのは嫌なのか?」
「そういうんじゃないけど」
「じゃあ、看病されとけよ。それとも……」

からかうように目が細められ、すうっと耳元に顔が寄せられる。そのまま流し込むように囁かれるのは、低い笑い声。

「エロいことされるんじゃねえかって期待してんのか、明日叶は」
「ば……っ! してるわけ、ない……っ!」

慌てて身をよじり、くちびるを噛み締めて睨みつけると、急な動きに咳が込み上げてきた。ケホケホと咳き込むと、ディオが背中をさすってくれる。

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